2000年度のプロ野球は、オリックスのイチロー選手の打率四割への期待で盛りあがりました。ご存知のように、過去、日本のプロ野球界でシーズン通算打率が四割を越えた選手は存在しません。1986年に阪神のバース選手が残した .389がこれまでの最高打率です。
アメリカ大リーグでは近代野球が確立する1901年から40年の間に多数の四割打者が存在しました。有名なタイ・カップやジョー・ジャクソンも四割を越えています。しかし現在の大リーグでは日本と同様、四割打者は存在しません。最後の四割打者は1941年のテッド・ウィリアムスで .406でした。(テッド・ウィリアムスは1953年に .407を残していますが、規定打席数に達していませんでした。)
番組ではニューヨーク在住の古生物学者である、スティーブン・J・グールド博士の理論 2)を取り上げています。古生物学者であることからわかるように、グールド博士は生物の進化を専門としていますが、同時に熱烈な野球ファンでもあります。
次にグールド博士は、1901年から大リーグ選手全員のシーズン打率を計算していきました。その中で、上位5人の平均打率と下位5人の平均打率の差が年ごとに小さくなっていることを見いだしました。最も成績のいい打者と最も成績の悪い打者の差がどんどん小さくなっていき、平均に近づいていたのです。つまり現在は、
よって、四割打者が絶滅した理由は、「野球界全体のレベルが向上し、最高と最低が平均に近づいたから」と博士は結論づけています。選手の能力が全体的にアップし、ばらつきが少なくなったことで、抜きんでた成績を残す選手が生まれにくい状態にあるわけです。それはプロ野球界が個々の能力差が少ない安定した状態に進化した証しでもあります。 さて、プロ野球に当てはまるこの現象は、もちろん草野球にも当てはまるはずです。それを確かめるために、私は自分のチームの打率のばらつきを計算してみました。私のチームは90年には連盟の3部リーグでしたが、徐々に実力を高め、98年には2部でベスト8に手が届くまでに成長しました。90年と98年とを比較しますと、90年はチーム打率 .166でばらつきを示す標準偏差は .116。98年はチーム打率 .219で標準偏差 .074でした。ばらつきをF検定にかけるとP値0.034で有意に差がある結果となりました。つまり私のチームも実力の向上と同時にチーム内の打率のばらつきが有意に小さくなっており、博士の理論に当てはまる結果となりました。 さらにチーム内の打率をながめてみますと、このチーム内のばらつきの原因となっているのが、打率0の選手の存在であることに気付きました。前述の理論を応用してチームの実力向上を図るには、チーム内のばらつきを小さくすることが必要となります。我々草野球のレベルでは、「打率0をなくすこと」..これがもっとも早い手段です。 チームの進化を考えた場合、「打てる選手がさらに打てるようになる」ことより、「打てない選手が少しでも打てるようになる」方が重要です。練習をやらずにそれを実現することは不可能です。まずは練習をすること。その練習は打てない選手に重点を置くこと。それがグールド博士の理論に基づいた草野球チームの進化の方法です。 (初版2000.10.9)
(改訂2008.5.21)
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