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スポーツが原因となって起こる貧血を「スポーツ貧血」と呼びます。本来健康に寄与するためのスポーツで不健康になってしまうのは何とも悲しいことです。しかし、スポーツ貧血に対する知識を身に付けておけば、予防することも、症状を改善することも可能です。
このうち、スポーツで引き起こされる貧血は、(2)溶血性貧血と(3)鉄欠乏性貧血の二つです。
赤血球は薄い生体膜一枚でできていますので、比較的容易に壊れます。壊れる原因はいろいろありますが、スポーツ時に溶血が起こるのは、足底を地面に強く踏みつけることで毛細血管内の赤血球が破壊されるためと考えられています。かつて「行軍血色素尿症」と呼ばれたものはまさしくこの溶血によるものと言えます。もちろん短時間の運動で起こるものではありませんが、マラソンや長距離歩行などでは footstrike hemolysis として知られています1)。
鉄分が貧血にいいということは一般知識として広く知られています。赤血球にはヘモグロビンという酸素運搬体が含まれていますが、このヘモグロビンはヘムとグロビンという二種類のタンパク質で構成されています。このうちヘムタンパク質は、図のように鉄(Fe)を中心とする構造になっています。このために鉄欠乏をきたすとヘモグロビンが形成できなくなります。ヘモグロビンは別名血色素ともいいますが、赤血球数は十分ありながら血色素量が少ないという、低血色素血症をきたすことになるのです。しかし、鉄分は赤血球の中だけに存在するわけではありません。赤血球中に存在する鉄分は体全体の約67%と言われ、その他肝臓や脾臓に約27%貯蔵されています。この貯蔵鉄を使い尽くすと貧血症状を呈するようになってしまいます。つまり、一時的な鉄欠乏ではなく、鉄欠乏状態が慢性的に続くと発症するもので、その意味で日常の食生活と非常に密接に関わっていると言えます。
RBC(赤血球数;10^6/ul)、Hb(ヘモグロビン量;g/dl)、Ht(ヘマトクリット値;%)の3つのデータがあれば、以下のように自分で指数を計算することができます2)。
MCV値が80未満、かつMCHC値が30未満であれば、鉄欠乏性貧血の可能性が高いと判断されます。さらに詳細に鑑別診断するには血清鉄なども測定する必要があります。しかし、血清鉄は健康診断レベルでは測定項目でないことが多いので、上記のデータと最近の食生活や体調を総合して自己判断することになります。
思春期のスポーツ貧血患者については、鉄剤を服用することで1ヶ月後ぐらいから改善が見られ、持久力などが向上したとの報告があります3)。食品として摂ることができる鉄分には、タンパク結合型と無機化合物型の二種類に分けることができます。 タンパク結合型としてはヘム鉄が広く知られています。最近では鉄との親和性の高いタンパク質であるラクトフェリンを利用したラクトフェリン鉄も存在します4)。無機化合物型はクエン酸第二鉄や硫酸鉄などの単なる鉄化合物を指します。貧血治療で処方される鉄剤はこの無機化合物型です。 溶血への配慮は、なんといっても足への衝撃を和らげることが第一です。最近ではショックアブソーバー内蔵の靴が多く出ていますから、それらを利用することは対策の一つとなるでしょう。また、足底の毛細血管は起床からしばらくは拡張傾向にあるらしく、そのため早朝に足に負担がかかる運動を行なうことは避けた方がいいという指摘もあります3)。早朝ジョギングや早起き野球を楽しんでらっしゃる方々は、足への負担の軽減を意識されてはいかがでしょうか。
(初版2002.3.14)
(改訂2008.5.21) 【参考資料】 (1)「スポーツと貧血」西里卓次ら, 日常診療と血液, Vol.6,No.4,1996 (2)「臨床病理学入門」, 医歯薬出版, 1990 (3)「鉄欠乏貧血とスポーツ活動」, 北島晴夫, 小児科診療, No.10,1999 (4)鉄・ラクトフェリンとは?, 雪印乳業株式会社 |
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