|
試合開始時間が早くて、いやだなーと思ったことはないでしょうか。特に大会などでは午前8時頃に試合開始というケースもありますから、集合時間はそれより早く午前7時頃、すると起床時刻は平日よりも早くなり、起床後も体がなんとなく重く感じられるということがあります。 このように、朝一番の試合は我々の起床時刻、ひいては睡眠時間を左右します。この章ではその「睡眠」について科学し、我々に有益な方策が得られないかを探ってみることにしましょう。
レム睡眠は、REM睡眠と書き、これは「Rapid Eye Movement」(急速眼球運動)から名づけられたものです。「寝ているはずなのに眼球がキョロキョロ動いている」というのが、レム睡眠の最大の特徴です。
脳は電気的な信号を発しており、それを記録したものが脳波です。睡眠中は脳波が段階的に変化していくことがわかっており、現在では5段階に分類されています。一般的な睡眠深度の変化を示したものが右のグラフです。(実測図ではなく概念図です。)
眠りについてから、30分から1時間ほどで一日の中で最も深い眠り(青い部分)に到達します。この時の眠りは「徐波睡眠」と呼ばれます。この徐波睡眠時に成長ホルモンの分泌が最も多いことがわかっています。
そもそも睡眠とは、一日のうちで生存に関わりのない時間帯に、無駄に行動してエネルギーを消耗しないために、体を不動化することを目的としています。下等な動物、例えば、爬虫類や魚類、昆虫などは、食べ物を探し求めるときには活発に動き回りますが、それ以外では安全な場所でじっとして動きません。この時、彼らは意識を失っているわけではありませんが、外見的にはヒトの睡眠と同じ状態になっています。レム睡眠は、これら下等動物の不動化と非常によく似ています。つまりレム睡眠は原始的な睡眠の形なのです。ネズミの睡眠を例に考えると、このことがよく理解できます。 ネズミは大脳皮質がほとんどできあがっていない状態で生まれてきますが、ネズミの新生仔はレム睡眠だけで、ノンレム睡眠がありません。出生後急速に大脳皮質が成熟していくとともにノンレム睡眠が増えていきます。つまり、簡単にまとめると、レム睡眠はエネルギーを使わないための原始的な睡眠、ノンレム睡眠はそれに加えて発達した大脳を休めるための進化した睡眠ということができます。
これを実現するには、自分の睡眠パターンを正確に知っておかなければなりませんが、簡易型の脳波測定器でもなければ難しそうです。しかし、レム睡眠の周期が90分〜120分であることを利用すれば、ある程度まで工夫ができそうです。つまり、自然に目が覚めてしまったときの時刻がわかれば、その前後90分〜120分にもレム睡眠期があるということが推測できます。眠りについた時刻もわかっていれば、3回目もしくは4回目のレム睡眠期を狙って目覚まし時計をセットするという工夫ができそうです。もしくはレム睡眠期に起きることを狙って、眠りにつく時刻を調節するという高度な技もありえそうです。
巷ではいろいろな機能を持った目覚まし時計が市販されていますが、深く眠っている大脳を無理やり叩き起こすのではなく、睡眠に関する知識を応用するだけで、目覚めがよくなる可能性が高くなります。それは同時に、不快な目覚め感を避ける工夫でもあります。早朝に試合が組まれ、早く起きなければならないときのために、普段から自分の睡眠パターンを把握しておくこと、つまり、自分はいつ寝るといつ頃にレム睡眠期になるかを把握しておくことは無駄ではありません。
<追加>
(初版2004.7.25) (改訂2004.10.11) (改訂2008.5.21) 【参考資料】 (1)「標準生理学」第5版, p429,医学書院 (2)「医科生理学展望」p136,1978,丸善(株) (3)「からだの科学」増刊2,p186,1984,日本評論社 (4)快眠のための睡眠判定と睡眠モニタシステム, 東芝レビューVol.61 No.10(2006) |
| <<第13章「日焼け」 | 「草野球の科学」メニュー | 第15章「花粉症」>> |
|---|