「草野球の窓」
第16章
「肥 満」
(平成16年 国民健康・栄養調査結果から)


 平成18年5月8日、厚生労働省から「平成16年 国民健康・栄養調査結果の概要について」1)が発表されました。この調査は、健康増進法に基づき、日本国民の身体状況、栄養状況、生活習慣などを明らかにして、国民の健康増進のための資料とする目的で実施されているものです。調査対象は男女とも満1歳から70歳以上の方まで総数9,345人という、統計的に十分信頼しうる規模で実施されています。今回はこの調査結果の中から肥満に関する結果をご紹介します。

日本人の体型の状況
 平成16年度の結果では、男性の場合、20歳代の2割、30〜60歳代では3割が肥満者です。20年前のデータと比較すると、どの年代も大幅に増加しています。普通に見ると、例えば20歳代では、この20年間に肥満者が2倍に増えているように見えます。しかしここでは、1984年の20代は2004年の40代であることに留意してください。つまり、1984年に9.4%が肥満者だった20代の若者が、20年後の2004年には32.7%にまで肥満者が増えているのです。
 このような見方で、肥満者割合が最も増えやすいのはどの年代なのか計算してみました。1994年のデータがありますので、1994年と2004年のデータを用いて過去10年間の肥満者増加率を計算しました。

同じ世代の肥満者増加割合
【男性】
1994年 2004年
20歳代→30歳代  1.7倍
30歳代→40歳代  1.4倍
40歳代→50歳代  1.2倍
50歳代→60歳代  1.2倍
60歳代→70代以上 1.1倍

【女性】
20歳代→30歳代  1.1倍
30歳代→40歳代  1.4倍
40歳代→50歳代  1.1倍
50歳代→60歳代  1.2倍
60歳代→70代以上 0.9倍

 このように見ていくと、グラフでは40歳代の男性が最も肥満者割合が高い(32.7%)のですが、この10年間の増加率では、(1994年の)20歳代の男性が最も肥満者が増えた年代(1.7倍)だったことがわかります。肥満は長い間の生活習慣の“結果”です。その土台は20歳代にあると言えましょう。

BMIとは何か
 さて、ここで肥満者というのはどのように定義されているかをご説明します。日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会で定義された肥満とは、BMI(Body Mass Index)という指数を用いて判定されています。

 BMI=体重(kg)/身長(cm)2

 このBMI指数が18.5未満だと 痩せ18.5以上 25未満正常範囲25以上肥満であると判定されます。よって、上のグラフはBMIが25以上の人の割合を示しているということになります。

 右にBMI指数を算出するフォームを用意しました。ぜひ自分のBMI指数、つまり肥満度を算出してみてください。(標準BMI値は22です。)

性 別 男  
身 長 cm
体 重 kg
BMI指数=
標準体重=
メタボリックシンドロームの状況
 さて、最近、メタボリックシンドロームという言葉をよく目にするようになりました。新聞などでも特集が組まれたりする2) ぐらい、急速に認知度が上がっている言葉です。これは別名「内臓脂肪症候群」とも呼ばれています。今回の調査結果では、このメタボリックシンドロームの現況についても報告されています。

 このメタボリックシンドロームが注目されているのは、この病態が動脈硬化を原因とする循環器病(心筋梗塞、脳梗塞など)につながるからです。下に示した診断基準では、内臓脂肪蓄積・高脂血症・高血圧・高血糖の4つの因子が挙げられていますが、これらはかつて“死の四重奏”と呼ばれていました。それほど将来の死の危険性が高い病態なのです。

 日本ではかつて米国の診断基準3) やWHO(世界保険機構)の診断基準4) を使用していました。しかし、国内8学会(日本内科学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会)でなる委員会が、2005年4月の日本内科学会総会において、日本独自の診断基準を策定しました5)。(左下参照)
 日本の診断基準の特徴は、“内臓脂肪蓄積を前提としている点”にあります。まず肥満ありきで、これに他の病態のうちどれか2つが併発している状態をメタボリックシンドロームと定義したわけです。

 日本のメタボリックシンドローム診断基準

【必須】内臓脂肪蓄積
     ウエスト周囲径 男85cm以上
             女90cm以上
     (CTスキャンによる断面像で100cm2以上に相当)

 上に加えて、以下のうち2つに該当するとき。

 高脂血症
 (中性脂肪 150mg/dl以上
   and/or HDLコレステロール 40mg/dl未満)

 高血圧
 (最大血圧 130mmHg以上 and/or 最小血圧 85mmHg以上)
 高血糖
 (空腹時血糖値 110mg/dl以上)

 メタボリックシンドロームの結果のグラフを見てまず感じることは、圧倒的に男性に多いということでしょう。平均寿命の男女差もうなづけてしまいます。そして、40歳代で急激に増加している点も見逃せません。しかし、これも生活習慣による“結果”ですから、その要因は20代、30代にあるということに留意したいものです。

運動習慣について
 この国民健康・栄養調査結果では運動習慣の状況についても報告されています。運動習慣のある成人男性は約3割、成人女性は約2.5割とありますが、ここでの運動習慣というのは、「1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続していること」と定義されています。よって、草野球人が週に1試合こなしただけでは運動習慣の定義から外れてしまいます。
 そこで、厚生労働省の進める「健康日本21」(21世紀における国民健康づくり運動)6) で推奨されている運動量を参考に週1回の試合の運動量を考えてみましょう。

 「健康日本21」では、外国文献に基づいて週に2,000kcal(1日300kcal)以上の運動が必要とされています。第1章「草野球とカロリー」で計算したように、草野球1試合で消費するカロリーは、体重60kgの場合、投手834.8kcal、捕手716.4kcal、内野手435.6kcal、外野手372.2kcal、チーム平均で486.7kcalです。ポジションでかなりの差はありますが、投手だと週2,000kcalのうちの4割、外野手は2割を1試合で消費している計算になります。

(2006.6.10)


【参考資料】
(1)「平成16年 国民健康・栄養調査結果の概要について」厚生労働省健康局,(2006)
(2)「Sankei Web 特集「メタボリックシンドローム」(2006)
(3)Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III),JAMA,Vol.285,No.19,2486-2497(2001)
(4)「Global and societal implications of the diabetes epidemic,Paul Zimmet,Nature,414, 782-787(2001)
(5)日本内科学会雑誌,94(4), p188(2005)
(6)「健康日本21」2.身体活動・運動, (財) 健康・体力づくり事業財団


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